旧作 旧作・高原へいらっしゃい 
(昭和50年度・山田太一作品) 

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語録&解説  

第4話 食後のロビーについての方針を語る面川清次

「食後のロビーについて私の方針を言いたい。前にも言ったように、手の空いた従業員が、ここでお客さん自然にふれあって、歌でも歌えるような雰囲気にしたい。ここにはビジネスで来るお客さまはいない。みんな楽しみにしている。しかし、夜になると全く行くところがない。そこで、このロビーを広場にしたい。お客さまと従業員とが、なごやかに歌えるように、山の高原の味を出したいんだ」
「・・・・」
「しかしね、ここが難しいところなんだ。ロビーにいるかぎりは、君たちはまだ勤務中だということなんだ。だからサービスをする気持ちを忘れてはいけない、馴れすぎてはいけない。さりげなくお客さまを中心にして楽しい時間を作る。お客さまを仲間はずれにするような事は、絶対に避けなければいけない」
「・・・・」
「それから静かにロビーにいたいという雰囲気には、さりげなく引き下がらるというデリケートな気持ちが欲しい」
「・・・・」
「とにかくお客さまがいる間は、君たちの時間は、お客さまに買われていると思わなければならない」
「・・・・」
「しかし、誇りを棄ててはならない。こっちもお客さまを選ぶという所が必要だ。どんなお客さまでも、お客だから泊めるということはしたくない。しかし、泊まっていただいたお客さまには、最高の満足して帰ってもらう。今までは、マナーを教えるという事で私にも教えることができた。しかし、このロビーで、どんな雰囲気を作るということについては、私には教えることができない。それは君たち一人一人の人格や魅力によって、楽しくもなるし、しらけることもある。よろしくたのむとしか言いようがない」

解説

 ブルーベリーで働く人全員に、この『高原へいらっしゃい』の4話を見せています。特に、この食後のロビーについての方針を語る面川の演説については、繰り返しヘルパーさんに見せて、ブルーベリーも同じ考えであることを説明しています。だから少しでも北軽井沢ブルーベリーで働いたことがある人は、全員、研修ビデオとして、この4話を強制的に見させられています。というのも、この言葉の中にとても重要な問題が込められているからです。アットホームを売り物にする宿泊施設の多くは、お客さまと馴れすぎたり、常連さんを大切にしすぎて一見さんを疎外したりします。そういう欠陥がアットホームな宿泊施設があるのです。だから

「馴れすぎてはいけない」
「さりげなくお客さまを中心にして楽しい時間を作る」
「お客さまを仲間はずれにするような事は、絶対に避けなければいけない」
「それから静かにロビーにいたいという雰囲気には、さりげなく引き下がらるというデリケートな気持ちが欲しい」
「とにかくお客さまがいる間は、君たちの時間は、お客さまに買われていると思わなければならない」

という面川の演説に重みがあるのです。また、面川は

「しかし、誇りを棄ててはならない。こっちもお客さまを選ぶという所が必要だ。どんなお客さまでも、お客だから泊めるということはしたくない」

と言ってますが、これも重要なポイントです。どんなお客さまでも、お客だから泊めるという発想は、お客さまにも失礼に当たるし、宿泊施設側にも不幸な結果をもたらします。というのも、宿泊施設には、得意不得意分野があるわけですから、お客さまの欲求に対して応えられないと判断したら宿泊施設側が断るのが親切だからです。宿泊施設とお客さまの関係は、恋愛関係のようなもので、不幸な出会いで不幸な関係をもち、両方が傷つくこともよくあります。そのためには、宿泊施設とお客さまの相性を的確に見分ける必要があり、最高の相性をセッティングし

「泊まっていただいたお客さまには、最高の満足して帰ってもらう」

に向けて頑張らなければなりません。もし、不幸にして、相性が悪かったとしても泊まっていただいたお客さまには、最高に満足して帰ってもらう姿勢が必要です。それが客商売でありというものですし、契約というものです。だから宿泊施設は、予約を受ける段階では慎重でなければなりません。しかし、いったん受けた予約に対しては、どんなお客さまに対しても、どれだけ不幸な組み合わせでも最高に満足して帰ってもらう必要があります。それを忘れると大失敗するのです。現に『高原へいらっしゃい』の第4話では、それを忘れた面川が大失敗をしているのです。