語録&解説
「私(大貫)をセールスに東京にやらしてもらいたいんです。 「セールスに?」 「一度私なりのセールスをしてみたいんです」 「君なりっていうことは、つまり」 「そうです、団体の予約をとってきたいんです」 「ちょっと」 「議論をしている場合じゃないと思います。率直に言って、あなた(面川)のセールスは間違いだったといっていいんじゃないですか。今のところ先行きの見込みは全くないんです」 「・・・・」 「フリーの客を待っていたら、このホテルは6月まで持つかどうかわかりません。何も言わないで私をセールスに出してください。2泊させてください。団体を嫌っている場合じゃないと思います。すぐたちます。よろしいですね」 「嫌ともいえないね」 「すぐでかけます」 「君は経理一本やりにやってきたんだろ、セールスの経験はないんだろ」 「無いですけれど、甘く見てはいけません」 「・・・・」 「そうとうの覚悟をもっています」 「たのむよ」
解説
客は来ない。大貫徹夫(前田吟)は、セールスに出してくれという。面川清次(田宮二郎)は、その熱意に団体へのセールスを許可しました。ここで面川の理想と差別化戦略が崩れるわけですが、背に腹は代えられなかったということでしょう。このときからホテルは、面川の戦略(長期計画)よりも、大貫の戦術(目先の客)が優先されるようになりますが、お客さまを選ばずに、なりふりかまわず予約を取らざるえなくなった、ホテルは、厳しい時を迎えるようになります。 ちなみにこの時代には、じゃらんもインターネットも無かったわけですから、足を使ったセールスでホテルの営業を行うしかなかったわけですが、大貫がこだわった団体へのセールスも、定員10〜20人といった規模のホテルでは、難しかったと思います。ちなみに、この時代(昭和50年)は、団体旅行全盛の時代でもありました。
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