旧作 旧作・高原へいらっしゃい 
(昭和50年度・山田太一作品) 

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語録&解説  

第11話 オーバーブッキング

「金がないということは悔しいことだね」
「悔しいですね」
「どうだい、目処はついたかい?」
「は?」
「24人お客さまを迎えられそうかい?」
「私は精一杯やりました。あとは貴方の判断に従いますよ」
「馬鹿に殊勝なことを言うじゃない」
「1日、あなた(面川)が約束どうりにしてくれたからね。私も約束は守ります」
「あと3日しかないんだ。間に合いそうかい?」
「それは貴方が判断することでしょう」
「いや、君の意見を聞きたいんだ」
「なんとしても24人のお客さまを迎えたいですね」
「客観的な意見を聞きたいんだ」
「絶対だいじょうぶと言いたいところですが五分五分です」
「少し甘くないかね。私は今の進行状態では無理だと思う」
「・・・・」
「大人しいじゃないか。反論しないのかね」
「あなたの言うとおりですよ」
「じゃあ、私が予約をとってきたお客さま、断ってもいいのかい?」
「・・・・」
「本当にいいのかい?」
「残念ですが、仕方がありませんね」

解説

団体予約を取ったはいいが、オーバーブッキングをしてしまったために、お客さまを断ろうとした面川清次(田宮二郎)ですが、大貫徹夫(前田吟)は、無理して詰め込んでもお客さまを断りたくなかったのでした。ふだんなら面川は、大貫が何と言ってこようとも詰め込んだりしないのですが、資金不足で首がまわらないホテルの現状と、大貫の熱意に、まだ整備できてない客室を大急ぎで整備してお客さまを詰め込むことにしました。その結果、最悪の事態になるのですが、資金繰りのあまりに方針がぐらついたために悲劇がおとずれることは、ほとんどの事業主が体験するところです。

 また、ここで注目することは、大貫が参謀の役割に徹するようになった事です。いつのまにか面川の判断を尊重するようになっているところに驚かされます。つまり大貫は、面川の判断を認めるようになったわけですね。しかし、客観的にみて面川は、決して経営の才能があるとは思えませんし、判断ミスも多いのです。それなのに大貫が面川の判断を尊重するようになったのは、大貫にも面川の戦略が理解できるようになったからだと思います。というか、面川が理想とするホテル像を大貫にもイメージできるようになったのではないかと思います。そして、そのイメージは、決して大貫にとっていやなものではなかったのでしょう。