語録&解説
第16話 面川清次の決断
「次の土曜日に14人の先生夫婦と子供たちをお迎えしたいんだ」 「まさか予約じゃないでしょうね」 「一人3000円しか払えないというんで断った」 「3000円では酷すぎますよ」 「しかし、どうだろう。もし、このホテルが最後になるとしたら、そういうお客さまをお迎えして、終わりにした方がいいんじゃないかって気がしてきたんだ」 「・・・・」 「持ち出してもいい。そんな気がしてきた」
「・・・・」 「君は甘いと思うかもしれないが、僕は、このお客さまをお迎えしたいんだ。お客さまを迎えて、お客さまに喜んでもらって、みんなで仕事らしい仕事をきちんとしてから終わりにしたいんだ。どうだろう大貫君」 「・・・・」 「・・・・」 「わかりました、やりましょう。泣かず飛ばずで終わるよりも、赤字のお客さまでも、きちんとお迎えして終わりましょう」
「ありがとう」
解説
この面川清次(田宮二郎)の決断は本当によくわかります。私も、同じような決断をしたことがあったからです。北軽井沢でペンションをオープンした1年は、夏はともかくとして、他の季節は、まるでお客さまが来ませんでした。赤字はどんどんふくらみました。ユースホステル契約した時も、最初の数ヶ月はさっぱりでした。冬場の1日の灯油代が5000円で電気代が2000円。お客さまが3人以下だと赤字ですから、冬は3人以下ならお客さまを取らない方がいいのですが、1人のお客さまを断ることはできませんでした。赤字は分かっていても、それで借金がかさんで資金繰りが苦しくなっても、お断りすることができなかった。仕事に飢えていたんですね。お客さまに飢えていた。人間に飢えていたんです。
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