旧作 旧作・高原へいらっしゃい 
(昭和50年度・山田太一作品) 

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企画書 シノプシス 登場人物 プロフィール

企画書に書いてある《登場人物たちのブロフィル》を読んでみました。
企画書を読んで、初めて『おや?』と思うことがありましたので、一部抜粋して紹介しておきます。

●面川清次(38)

私立大学英文科を卒業後、東京の一流ホテルに入社し、32才の若さでフロントの主任になった。この業界では異例の抜擢であった。努力もしたが,それだけの才能もあった。ホテルマンは全く面川にはピッタリとくる職業なのだった。人も羨やむ幸せな結婚もした

面川さんは、英文科の御出身だったんですね。
そして、異例の抜擢を受け、人も羨やむ幸せな結婚もしたわけです。
しかし、32歳でフロントマネージャーですか。


●高村靖雄(22)

秋田県出身。四人兄弟の末ッ子。家は十和田湖の近くで青果の卸商をやっている。高校卒業後上京した彼は文字通り希望に燃えて××ホテルに就職した。(略)。ホテルに対して感じていた彼の幻想はもろくもくずれ去り、もう止めようと靖雄は思った。そんな時面川が現れて、彼を誘ったのである。面川によって靖雄は始めてやり甲斐のある仕事が与えられた。

ホテルが営業を始めてからの出来事であるが、面川が他客に迷惑を掛けるマナーの悪い客を他のホテルに行って呉れと追い出した時であった。その頃グリーンウッドはまだまだ客が少く、一人でも多くの客に泊ってもらいたい時期であった。靖雄は「客は常に正しい」と教えられて来たから、わがままで理不足な客に対して殴りつけたい程の憎悪感を覚えてもにこやかにスマイルを浮べて接遇する惨めさを何度となく味わつていたからである。

靖男君が、秋田出身だったとは意外でした。
あと、この靖男君の設定は、リメイク版『高原へいらっしゃい』の中原友也の方が近いですね。


●北上冬子(20)

東京生れの東京育ち。三人姉妹の次女。父親は公務員である。久子が高校生の時父が病気で倒れた為、卒業後すぐに都心のデパートの食堂で働くことになった。

久子はとにかく仕事に熱中することで青年の事を忘れようとした。

東京生れの東京育ち。三人姉妹の次女。父親は公務員。
高校生の時父が病気で倒れた為、卒業後すぐに都心のデパートの食堂で働く。
そんな子が、八ヶ岳高原ホテルにくるわけがない。
まわりからひっぱりだこでしょ?
しかし、失恋して東京を離れたがっていたわけです。

八ヶ岳高原ホテルで一生懸命仕事をする理由は、失恋を忘れるため。
面川さんの『復縁するために』一生懸命仕事をする理由とは正反対。


●鳥居ミツ(24)

九州天草出身。漁師の娘である。電気通信工美高校卒。男尊女卑の気風に反発した彼女は負けん気を発揮して男の職業と思われている電気関係の仕箏を選んだのである。同時にボイラー取扱いの資格も得た。本来男勝りで開放的なミツは上京して電気工務店で働くうち、あまりに彼女の言葉のナマリを笑われからかわれるので努めて標準話で喋ろうと心掛けるうち、次第に無口になった(略)。ミツは淋しかった。今月の給料をもらったら今度こそ郷里に帰ろうと思っている時、面川から話があったのである。(略)

天草出身ですか!


●小笠原史郎(22)

徳島出身。高夜卒業後東京のレストランに就職したが長続きせずその後いろいろな職業を転々とした。酒が飲めない癖にバーの雰囲気が無類に好きで、通っているうちにカウンターの中に入って一寸とした手伝いをやったりする様になり、いつの間にかバーテンダーになっていた。人づきあいの好きな彼は初めて自分に向いた仕事を見つけたのである。小笠原は他人の影響を受け易い男であった。先ず都会人にありがちな調子のいい軽薄さにいとも簡単に染ってしまった。

 金もない癖に流行の先端を行く服装や持ち物を身につけたがった。人がびっくりして、思わず振り返る様な恰好をして得意になっていたのである。都会風を吹かして田舎者を見下してからかうのだが相手が怒るとすぐに謝ってしまう。小さい時からケンカが弱く、腕力の強い奴には全く頭が上らないのである。忙しくて目が廻りそうだと云いながら、それがちっとも苦にならず、かえって忙しさを楽しんでいる所もあった。(略)

これも、旧作『高原へいらっしゃい』の小笠原史郎というより、
リメイク版『高原へいらっしゃい』のホリケンそのものじゃないですか!
企画書を読んで、つくづく思うのは、リメイク版『高原へいらっしゃい』


●高間麟二郎(63)

日本の司厨士界は第一次大戦后の園遊会の流行と共に発展した三つの系列があり、一流料理人はいずれかの系列に属している。だが高間はどの系列にも属さない男であった。修業時代系列下の複雑な人間関係に嫌気がさして、日本を飛出してしまったのである。料理は美味い事が先ず第一である。どんな流派である事などはどうでもいい問題だ、(略)

高間は職人気質の男でつむじを曲けるとテコでも動かないというところがあった。だから面川も高間に気持良く働いて貰う為に随分気を使った。

修業時代系列下の複雑な人間関係に嫌気がさして、日本を飛出してしまったとは。
逆にこういう人でないと八ヶ岳高原ホテルには来てくれませんね。
複雑な人間関係が嫌な人なんですね。
リメイク版『高原へいらっしゃい』の小池さんとは、ちょっと違っています。


●服部亥太郎(30)

沖縄出身。料理長、高間の弟子。(略)

服部は無愛想で無口な男である。時折喋ると非常に乱暴な云い方をする。だから殆んどの人から誤解される、だが本質は非常に優しく、虫一匹殺せない繊細な神経の持主なのである。仕事が終った後、一人で静かに詩集を読むのが好きであった。彼の趣味のもう一つは音楽である。聴く事も好きだが、ギターを弾き、歌を唄う。こちらの方は趣味の域を超えていた。それで充分メシが食える位の腕前なのである。作った曲もかなりの数になっていた。グリーンウッドの料理人助手は隠くれたシンガーソングライターなのである。だが、高間以外は誰も知らない事であった。

う〜ん、隠くれたシンガーソングライターだったのか
しかも、高間以外は誰も知らない事。
それで最初、小笠原史郎がギターひいてたんですね。
やっと、謎がとけました。

しかし、隠くれたシンガーソングライターの設定は、早いうちから、みごとにひっくりかえりましたね。
これはなぜ?


●杉山七郎(19)

素朴で素直な逞しい地元の青年。出来ることは全部皆の手でやらねばならないグリーンウッドでは彼の存在は貴重である。ホテルの修理、周辺の整備などは七郎が道具や材料を調達し、作業の中心となって始めて出来ることであった。又、必要ないろいろな物の運搬も彼の持つジープだけが頼りである。物だけではない開業後客の送迎も彼の仕事であった。駅から着いたという電話が掛ると彼がジープを馴使して、出迎えにおもむくのである。運動神経に恵まれた彼は運転が巧い。ジープの送迎は他に車が無い為、止むを得ず始めたことだったが若い旅行客には鄙びた雰囲気を助成するらしく意外な位好評であった。

彼は猟銃の名手でもあった。狩猟期間になると彼は銃と食料を持ち山に入る。何処に行けば何がいることを知り抜いているので必ず見事な獲物を持って帰ってきた。鴨・兎・猪などは高間の包丁さばきで野趣あふれる料理となって客の食卓に饗された。これはグリーンウッドの立派な特色の一つにもなったのである。

この設定に忠実だったのは最初の方だけでしたね。
途中から史朗君に馬鹿にされるキャラに変更しましたね。


●有馬フク江(45)

おとぼけ小母さんである。知識欲が旺盛でマンガ、週刊誌とスポーツ新聞しか読みたがらない若い者より余程いろんな事を知っている。だが知らない振りをして人に喋らせ、楽しんでいるといったところがある。働き者である。働くことが好きで徹夜しても翌日ケロリとしている程タフでもある。賭け事をやったら滅法強い。胆っ玉が太いというのか勝負度胸があるのである。本人は黙っているが、実は亡くなった亭主が勝負事が好きだったので大低の賭け事はよく知っているのである。少々の事ではへこたれないし忍耐強い。年令的に若い者が多いグリーンウッドでは異色の存在だが、気持は若い。物の考え方も柔軟である。アメリカ・ヨーロッパ22日間というジャルパック旅行の体験も持っている。話し易く、なんとなく頼り甲斐のある小母さんなのだ。小母さんは或る時一同をアッと驚かす事をケロリとした顔でやってのける。

この設定はボツになっています。
何故かは御想像のとうりです。


●大貫徹夫(30)

広島県出身。面川の義父大場専造と郷里が同じ縁で大場家の書生をしながら大学に通い、卒業后大場の会社に就職した。経理課である。大貫は実直で真面目な人柄である。こつこつと勉強して公認会計士の資格も取った。唯あまりにも真面目すぎて、冗談が通じないといった融通性に欠けるところがあった。

大貫は常々数字相手の経理の仕事よりも生きた人間相手の仕事・接客業に憧れを持っていた。彼には接客業は全く向いていないにも係らず、大貫自身はそう思っていない所に問題があった。

彼は固い男ではあったが、淋しがり屋で皆の連帯の輪の中に入りたいと望んでいた。しかし彼がそうしたいと努力すればするほど云い方が唐突になったり、タイミングを逸したりして、仲々巧く行かないのだった。

な、なるほど、大場家の書生だったのですか。
面川が最も苦手とするタイプですか。
これはキャラどうりですね。


●村田日出夫(33)

地元の卸売業者。注文があっても良質の物がないと支入れないし、大量に買うからといっても値引きもしない男である。地元では変り者で通っていた。グリーンウッドが料理を売り物にする以上、良質で新鮮な材料を必要とする。高間はいろいろ足を運んで調べた結果村田を選んだ。だが村田と高間はうまが合わず、衝突することが多かった。お互いに相手の鑑識能力、料理の腕前を認めているものの交渉がスムーズに行かないのである。村田は歯に衣をきせずにものを言う男だし、それに一言多いタイプである。二人は、会わないと淋しく感じるが会うと必す衝突した。

村田は無類の酒好きで支払いが終わると必す食堂で酒を飲んで帰る。飲めないからと断る面川に必ずすすめる。酒を飲まない人間は信用出来ないなどと云い、酒の効用を一席ぶつのである。村田はグリーンウッドにとって必要な男ではあるのだか、面川に常に酒の危険を誘発する存在であった。

「村田と高間はうまが合わず、衝突することが多かった」

この設定の村田さんも見てみたかった。逆にいうとリメイク版『高原へいらっしゃい』なんかは、この設定役を微妙アレンジして面川さんにやらせていますね。ただ、材料に関することは、高度の専門知識が必要なので、ライターの人の取材力が必要です。忙しい山田太一氏には無理だったかも。ただし、ネットの普及した現在なら無理ではありませんね。

「飲めないからと断る面川に必ずすすめる」
「面川に常に酒の危険を誘発する存在であった」

この設定もボツになったのは何か惜しい気がします。ただ、ボツになってないと、私たちの知っている村田さんではなくなるので、それも困ります。


●大場専造(58)

(略)大場は面川に話を切り出す前に、その閉鎖された廃屋を実地検分に行き、自分の目で確かめている。専問家にこのホテルを建て直し、開業する為の必要経費を見積らせた。四百万であった。大場は見積りから可能な限り縫費をカットさせた。その最低必要経費が三百万という答えを得た。大場は、それから更に百万削った二百万を面川に渡すことにした。二百万が少なすぎる資金だという事は充分承知していた。

当時の物価を考えても開業費が400万という見積もりは、少なすぎます。
2000万は必要でしょう。


●面川祐子(28)

(略)面川からの音信は全く無かったので祐子は彼か今何処で何をしているのか全く知らなかった。

(略)或る日祐子は勤め先の気の合う友人から今度の連休に旅行に行かないかと誘われた。久し振りに旅もいいなと彼女は思った。週刊誌の旅行特集に信州の変った小さなホテルの事が紹介されているからそこはどうかと聞かれた。祐子は別に異存はたかった。グリーンウッドというホテルだと友人が云った。祐子はいい名前のホテルだと思った。

これ最終回ですかね?
それとも、ここから、またスタートするんですかね?