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解説4

2003年8月26日 (火) 07:59

 物語の最後で小池さんは、自分が引き抜かれるわけがいかないことを皆に告げます。シンガポールのホテルで働いていた時代に面川さんの父親に、勝手にホテルを売却をされてしまい従業員を放り出されたことを語り、自分が八ヶ岳高原ホテルに来た理由は、このホテルを潰したくないからだといいます。

 つまり小池さんには、はっきりとした目的があったわけです。面川さんの義父の狙いを知っていて、八ヶ岳高原ホテルに来ていたわけです。そして若月が10月に売りに出されることをついに口にするのです。

 複線が大量に存在する連載ドラマは、最終回まで見てみないと作家の意図が読めなかったりするのですが、このリメイク版『高原へいらっしゃい』も、その部類のドラマですね。人間のぶつかり合いよりも、人間の葛藤が正面に出てきてしまっている。メロドラマのつくりに近いですね。

 それはともかく、ここまでくると旧作とは似ても似つかない、本当に別世界の御話しになってしまいました。旧作が『わけあり』の人間の孤独さがプンプンと匂っていたのに対し、リメイク版では、企業戦争の中で犠牲になりつつある歯車たちの御話しになってしまっていますね。

 旧作の八ヶ岳高原ホテルが、かぎりなくペンションに近かったのに対して、新作の八ヶ岳高原ホテルは、かぎりなく企業としてのホテルに近い。そして従業員には高給が保障されてて、御客さまも苦労せずに順調に入っている。明日の食事にも事欠くと言うことは決してありませんし、御客さまが来なくてホテルから1円も無くなるということもありません。つまり、新作の八ヶ岳高原ホテルは、ホテルなんですね。今は、めいっぱいブランドを売り、将来増築し、そのブランドを使って大きく集客するための単なる歯車だったわけです。

 しかし、若月などは、そういうホテルよりも、ペンションの雰囲気を残す、小さな八ヶ岳高原ホテルが気に入ってしまった。それは面川さんも同じかもしれません。ただ、このへんあたりは次回を見てみないとわかりませんが、素晴らしい脚本になっていることを『高原へいらっしゃい』ファンとして祈っております。