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総括5

2003年9月6日 (土) 20:20

 熱心なサンタクロース信者。

 そういう立場であればあるほど、意地悪くサンタクロースを否定する存在になる可能性が高いです。これはプロレスファンにしたって同じ事です。プロレスにとっての最大の敵は、
「熱心なプロレス信者」
であったりします。熱心なプロレス信者であるほど、ある日突然転向して、意地悪くプロレスの悪口を言いつづける存在になったりする。

 私の父がそういう人でした。父は、最初、熱心なプロレスファンでしたが、やがてすぐにプロレスの虚構を見破り、プロレス番組に熱中する私や祖母の前で、プロレスインチキ論を演説しました。その時の私は、
「へえ〜」
と感心したものでしたが、祖母は悲しい顔をみせました。

 祖母は、一生懸命プロレスを見つづけました。死ぬまでプロレスファンをやめませんでした。父がどんなにプロレスの悪口を言っても、どんなに子供の教育に悪いと言っても、祖母は隠れてプロレスを見つづけました。

 私は、熱心なプロレス信者ではありませんでしたが、この件については祖母の味方になりました。別におばあちゃん子ではありませんでしたが、祖母の味方になりました。そして私と祖母は、父に隠れてプロレスを見つづけました。世間に隠れてプロレスを見つづける人たちの味方になってしまっていました。

 熱心なサンタクロース信者
 熱心なプロレス信者

 両者の立場は、微妙に似ているところがあります。
 そして旅人の立場も微妙に似ているところがあります。

 例えば、子供の頃からあこがれていたネパールに旅立ったとします。けれど、夢にまで見たネパールが不潔であることを知ってガッカリし、ネパール人に騙されてガッカリし、おまけに財布やパスポートを盗まれ、さらに暴力や人種差別をうけるといった酷いことが続けば、誰だってネパール嫌いになることでしょう。この場合、熱心なネパール信者であればあるほど、ネパールの敵になる可能性が高くなります。

 私は、旅先で、そういう体験の持ち主であるネガティブな人に出会うと、つい、ネパールの味方になってしまいます。父が言ってた「プロレスのインチキ」が全部本当だとしても、祖母と一緒にプロレスを楽しみたいし、ネパールが本当に悪いところだとしても、ネパール好きな人のネパールの話を聞かせてもらいたいのです。