ブルーベリー 旅に出たい人へ
  風のひとりごと

寅さん映画の全作品を
紹介します!(前編)

(★印は独断と偏見の面白度です)

第1作『男はつらいよ』 ★★★★

 映画『男はつらいよ』は、昭和43年にフジテレビで放映されたテレビドラマを映画化したものです。会社の反対にもかかわらず、山田洋次監督によって強引に映画化されたこの第1作は大ヒットとなりました。
 この映画は
「桜が咲いております。懐かしい葛飾の桜が今年も咲いております」
という名セリフから始まります。テキ屋の寅さんが使う日本語は、なぜか美しく、粋でいなせな江戸っ子の言葉に魅了されてしまいます。それが寅さんの魅力であり、寅さんが数々のマドンナと接点になっています。
 日本語が崩壊して久しい現代社会において寅さんほど美しい日本語を話す人を私は知りません。
 ところで寅さんの妹であるさくら(=倍償千恵子)は、清礎で美しく、とても兄妹には見えませんでした。しかも賢くて人徳者で人気者。そして縁談の話しで引っ張りだこ。これが不細工でヤクザ者で迷惑ばかりかけている寅さんとのアンバランスぶりがよかった。
 ちなみに今でこそ寅さんのマドンナは女優さんのあこがれの役ですが、「テキヤなんかのマドンナで出演するのはいやだ」と言って色んな女優さんが出演を断ったと聞いています。それを快く引受けてくれたのが第1作のマドンナ、光本幸子でした。光本幸子に感謝!


第2作『続・男はつらいよ』 ★★★★★

 私の独断と偏見で言わせていただければ、この第2作こそ、シリーズ最高傑作ではないかと思います。冒頭の夢のシーンと現実のアンバランスぶりが笑えます。そして心温まるエンディングシーン。


第3作『男はつらいよ・フーテンの寅』★



第4作『新、男はつらいよ』★★★★

 面白い。圧倒的に面白い。第2作と並んで寅さんの代表作にいれてよいでしょう。競馬で大穴を当てた寅さんは、オイちゃんにオバちゃんたちに恩返しとしてハワイ旅行に連れて行くことになった。御近所の人たちは「よかったなあ、寅が真面目になって」と大喜びで祝って、見送ってくれた。
 ところが寅さんたちは、インチキ旅行会社にひっかかってハワイには行けずしまい。御近所の手前、いまさら戻るに戻れず、ハワイには行ったことにしておいて、夜中にこっそりと自宅に戻ってきて、2〜3日ひっそりと暮すことにする。
 ところが、そこに泥棒が入ってくる。泥棒は寅さんたちに捕まるが、近所に隠れて暮している寅さんたちの弱味を握ってしまうからさあ大変!


第5作『男はつらいよ・望郷篇』★★★★

 寅さんが「額に汗する地道な労働」に憧れ、地道に働こうと決心をします。けれど、失敗だらけ。結局、マドンナにふられて旅立ってしまう。そういう物語です。けっこう哀れな寅さんでした。


第6作『男はつらいよ・純情篇』★★★★★

 有名どころの女優が、のきなみ嫌がった寅さんのマドンナ役を、人気絶頂の若尾文子が演じて大ヒット。以降、名女優がマドンナ役を引き受ける様になり、今ではマドンナになりたくてもそう簡単になれない映画となっています。


第7作『男はつらいよ・奮闘篇』★★★★★

 知恵遅れの少女(榊原るみ)が寅さんを慕ってやってくる。寅さんは、そんな少女のために一生懸命がんばる。大爆笑の連続で、最後にホロリとさせられる。個人的には、寅さんシリーズの中で最も好きな作品。この作品も、寅さんシリーズの最高傑作に入れてよいと思います。


第8作『男はつらいよ・寅次郎恋歌』★★★★★

 この作品も傑作の誉れ高い作品です。不調の続く近年の寅さんシリーズと比べると、この時代の寅さんシリーズは、面白すぎます。第4作〜第8作までの寅さんシリーズは、どれをとっても傑作なのがすごいです。


第9作『男はつらいよ・柴又慕情』★★

 旅先で知合った女子大生(吉永小百合)に、嘘をつきます。そして柴又でバッタリと再会。いまさら、あれは嘘だったと言えない寅さんは四苦八苦。


第10作『男はつらいよ・寅次郎夢枕』★★★★

 もう少しで寅さんが結婚できた唯一の作品。
「寅ちゃんとなら(結婚しても)いいわ」
と言うマドンナ(八千草薫)だが、寅さんもオイちゃんたちも、みんな冗談だと思ってしまいチャンスを失ってしまう悲しい喜劇。


第11作『男はつらいよ・寅次郎忘れな草』★★★★

 リリーと寅さんの物語。
 リリーは、第15作『寅次郎相合い傘』、第25作『寅次郎ハイビスカスの花』、第48作『寅次郎紅の花』にも出演しているスーパーマドンナです。


第12作『男はつらいよ・私の寅さん』★★★



第13作『男はつらいよ・寅次郎恋やつれ』★



第14作『男はつらいよ・寅次郎子守歌』★★★

 ふとしたことから赤ちゃんを預る寅さん。赤ちゃんを病院に連れて行って看護婦さんに惚れる。その後はパターン通りにふられる話し。けっこう笑えます。
 それから不思議なことに、寅さんの恋敵(ライバル)になる登場人物は、みんな三枚目ばかり。容姿も収入も寅さんと差がありません。おまけに寅さんよりドジで無口で女っけがない人ばかり。なのに皆、寅さんを押し退けてマドンナをかっさらっていきます。
 寅さんは、決して女扱いが下手ではなく、能弁で口が達者で、時と場合によってはモテモテなのですが、最後には必ずふられます。どうしても結婚できないのです。


第15作『男はつらいよ・寅次郎相合い傘』★★★

 もう1歩でリリーと結婚できた寅さん。女にモテモテの寅さんは、どうして女に手を出せないのでしょうか? その謎を解く鍵は、妹さくらにあります。
 少年のころ父親に叱られ、道端でシクシク泣いていたとき、傍らにすわって一緒に泣いてくれた妹さくら。十六歳のときに家出しようとする寅さんのあとを、どんなに追いかえしても付いてきたさくら。そして、柴又駅でせんべつだと言っておはじきがいっぱいはいった箱をくれた妹さくら。
 情に恵まれなかった寅さんが、感動しなかったわけがない。寅さんが、ギリギリ一歩のところでグレなかったのは、さくらのおかげに違いありません。
 だから寅さんが、女性にたいして、あれだけ純情なのは、マドンナたちの中にさくらを投影しているからです。だから寅さんは、マドンナと手も握れない男なのです。


第16作『男はつらいよ・葛飾立志篇』★★★★

 寅さんはインテリが嫌いです。だから寅さんは、学者風の人を見つけると
「ははーん、てめえ、さしずめインテリだな」
と嫌味を言います。
 ところが、この作品では寅さんが、インテリのマドンナに惚れてしまいますからさあ大変。寅さんは、自分もインテリになろうと一生懸命に努力します。
 ちなみに寅さんのイメージするインテリとは、社会主義者(マルクス主義者)らしく、インテリに変身した寅さんは、ふだん「おい職工!」と呼びかける工場の人に対して「労働者諸君!」と呼びかけます。また「おいアンちゃん」が「おい青年」になったりします。


第17作『男はつらいよ・寅次郎夕焼け小焼け』★★

 日本画の大家池之内青観(宇野重吉)と寅さんの交流が可笑しい。


第18作『男はつらいよ・寅次郎純情詩集』★★



第19作『男はつらいよ・寅次郎と殿様』★★

 伊予の殿様(嵐寛寿郎)と寅さんの交流が可笑しい。寅さんには、まるっきし身分感覚がありません。芸術家も殿様も歌手も、寅さんにとっては、ただのカタギ人。寅さんの頭の中には、カタギとヤクザの2種類の身分しかインプットされてないようです。
 この寅さんの身分感覚を、私はこよなく愛しています。この世には、カタギとヤクザしかいない。そしてカタギの人たちを心から羨ましがっているのがヤクザな人間たちなんですね。


第20作『男はつらいよ・寅次郎頑張れ!』★★

【風のひとりごと】
(旧「風のたより」40号掲載文・1996)

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